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第57話 焦げた食パンとヨーグルト

last update publish date: 2026-06-16 20:57:45

 朝、仮部屋のテーブルには、焦げた食パンとヨーグルトが並んでいた。

 焦がしたのは朔弥さんだ。

 御門の家なら、朝食は黙っていても出てきた。

 カップの位置も、果物の切り方も、誰かが先に決めていた。

 ここには使用人がいない。

 パンは自分たちで焼くし、ゴミ袋の替えも自分たちで探す。

 昨日の夜、朔弥さんは洗剤の場所がわからず、私は加湿器の水を床にこぼした。

 不便だ。

 でも、誰かの手できれいに囲われているより、ずっとのびのびできた。

「社長」

「言うな」

「火加減は支配できなかったんですね」

「トースターに支配権はない」

 真面目な顔で返されて、私は笑ってしまった。

 すると朔弥さんは、ほんの少しだけ目を細めた。

 私の笑い声を聞いている、というより、大事なものを見るような目だった。

 そんな風に見られて、身体のどこかが甘く痺れた。

 焦げたパンの匂いも、冷めかけたコーヒーも、その朝だけはなぜか悪くなかった。

 臨時総会。

 損害賠償。

 身の程。

 御門家で聞いた言葉を思い出す。

 それでも、焦げたパンで笑える。

 朔弥さんは焦げた
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  • 子どもはまだかと責められ、夫には離婚を告げられましたので、都合のいい妻は卒業します   第5話 次の嫁がいる食卓

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  • 子どもはまだかと責められ、夫には離婚を告げられましたので、都合のいい妻は卒業します   第4話 もう、都合のいい妻ではいられない

    「真尋。今はやめろ」  掴まれた手首が痛い。  腹の奥が焼けて、呼吸が乱れた。  叫びたかった。この場で全部、ぶちまけたかった。  彼の顔を見た。  そこにあったのは、私への心配ではなく、場を乱された苛立ちだった。  胸の奥を、鈍いものが刺した。  そのとき、澄麗の声が届いた。 「ごめんなさい。私、何か失礼でしたか?」  澄麗は困ったように目を伏せる。  完璧だった。責めたほうが浅く見える形に、もう整っていた。 「……いいえ。お気遣い、ありがとうございます」  噛みしめた唇が切れ、舌の裏に鉄の味がした。  朔弥さんの手が離れる。  そこだけが、熱を持って痛んだ。

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